驚異的な強さを見せつけ、バルサはリーガの首位に立っている。正直な話、モウリーニョのマドリが簡単にとりこぼすとは思えないながら、それでも今のバルサがリーガ3連覇を逃すことは、よもやあり得ないだろう。そう断言してもいいくらいに、決定的な差を見せつけ、バルサは勝ち続けている。
少し古い話だが、ペップがクラシコ直後にこんなコメントを残した。
“このやり方で勝てたことがうれしい”
このやり方。それはバルサが1980年代の後半にヨハン・クライフを監督に迎えて以降、一貫して目指してきたスタイルのことだ。パスを回し、ボールを動かし、ボールポゼッションを高め、試合を支配する戦い方。それをやられた相手は主導権を握られ、走らされて、集中力を失う。そしてバルサはその一瞬の隙を狙うのである。また高いボールポゼッション故、相手にボールを触らせないという観点から、それを最大のディフェンスアイディアとしている。
現バルサ監督であるペップことグアルディオラは、このスタイルで育った選手だった。そしておそらくこのスタイルの中でしか活きない選手であった。実際にスペイン代表では凡庸な成績しか残していないワケだが、それはともかく、このスタイルを最もよく理解してプレーしていたペップが、今度は立場を変えて、それを最も高い次元でピッチ上に現出させている。
そしてその最高次元を可能としているのが、バロンドールの最終候補に選ばれた3人の選手、中でもチャビがこの「パスを回し、ボールを動かし、ボールポゼッションを高め、試合を支配する戦い方」をする上で、一番欠かすことのできない選手であろう。
チャビはこの3年間で、フットボール史上最も偉大なミッドフィールダーになった。これは大げさな表現と思われるかもしれないが、それでもボクはあえて、そう断言する。なぜなら、この3年でチャビは獲得することの可能なタイトルのすべて(EURO、クラブ6冠、ワールドカップ)を手中に収めたからである。こんなことを成し遂げた選手は他にいない。スペイン代表とバルサと、そのフットボールの中心にいるチャビ。だからこそボクは、チャビを最も偉大なミッドフィールダーと断言した。
ツイッターなどでバルセロニスタの意見を見ると、チャビにバロンドールを、という声が多い。これだけのことをやってきているのだから、それも当然だろうが、これは裏を返せば、チャビが受賞するに断言はできかねるということでもある。昨年のメッシーのように、絶対的な意見ではないというワケだ。でもそれは、彼のプレースタイルにもよるところが大きいのかもしれない。
例えばバロンドール最終候補のメッシー。彼は誰もが認める世界No.1の選手であり、昨シーズンのゴールデンブーツでもある。ワールドカップでは期待された活躍はできなかったが、今シーズンも、昨シーズンを超えるペースでゴールを量産、派手さがある。
もう一人のバロンドール最終候補のイニエスタも、本来は地味な方だが、ワールドカップ決勝でのゴールというインパクトを持っている。もちろんイニエスタもチャビ同様にこの3年ですべてのタイトルを獲得した選手でもあるから、獲得するに十分だ。
それに対してチャビは、これといって、決定的な決め手があるワケではない。ただ、バルサとスペイン代表と、そのフットボールをより高次元にしている選手として、高い評価を受けただけのことだ。だからこそバルセロニスタはチャビに受賞してほしいと思っているのだろうが、でも実のところ、ボクの意見は真逆なのである。
そう、チャビには決定的な要素がない。マドリ戦やエスパニョール戦でのゴールは素晴らしかったが、あれはデルビーがなさせただけのこと。本来は主役になる選手ではない。あくまでボールを保持し、ゲームを支配することが持ち味であり、その結果としてメッシーなりビージャなりをその日の主役にさせる。そういう選手なのである。
だからこそボクはチャビにバロンドールは必要ないと考えている。
ペップのいう“このやり方”とは、けっして一人のクラックに依存しない、選手11人が連動し、相手を圧倒するフットボールのはずだ。その11人を連動させる潤滑油たるチャビが、クラックの最たるものといえるバロンドールを受賞するなど、皮肉以外の何物でもない。だからボクは、もし本当にチャビがバルサのスタイルを最高次元にしている選手であるならば、バロンドールを受賞すべきではないと考えているのだ。
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