2010年12月21日

フットボール史上最高のミッドフィールダー

 リーガ10連勝。その間の得点が「41」に対して失点は僅かに「4」。
 驚異的な強さを見せつけ、バルサはリーガの首位に立っている。正直な話、モウリーニョのマドリが簡単にとりこぼすとは思えないながら、それでも今のバルサがリーガ3連覇を逃すことは、よもやあり得ないだろう。そう断言してもいいくらいに、決定的な差を見せつけ、バルサは勝ち続けている。

 少し古い話だが、ペップがクラシコ直後にこんなコメントを残した。
 “このやり方で勝てたことがうれしい”
 このやり方。それはバルサが1980年代の後半にヨハン・クライフを監督に迎えて以降、一貫して目指してきたスタイルのことだ。パスを回し、ボールを動かし、ボールポゼッションを高め、試合を支配する戦い方。それをやられた相手は主導権を握られ、走らされて、集中力を失う。そしてバルサはその一瞬の隙を狙うのである。また高いボールポゼッション故、相手にボールを触らせないという観点から、それを最大のディフェンスアイディアとしている。
 現バルサ監督であるペップことグアルディオラは、このスタイルで育った選手だった。そしておそらくこのスタイルの中でしか活きない選手であった。実際にスペイン代表では凡庸な成績しか残していないワケだが、それはともかく、このスタイルを最もよく理解してプレーしていたペップが、今度は立場を変えて、それを最も高い次元でピッチ上に現出させている。
 そしてその最高次元を可能としているのが、バロンドールの最終候補に選ばれた3人の選手、中でもチャビがこの「パスを回し、ボールを動かし、ボールポゼッションを高め、試合を支配する戦い方」をする上で、一番欠かすことのできない選手であろう。

 チャビはこの3年間で、フットボール史上最も偉大なミッドフィールダーになった。これは大げさな表現と思われるかもしれないが、それでもボクはあえて、そう断言する。なぜなら、この3年でチャビは獲得することの可能なタイトルのすべて(EURO、クラブ6冠、ワールドカップ)を手中に収めたからである。こんなことを成し遂げた選手は他にいない。スペイン代表とバルサと、そのフットボールの中心にいるチャビ。だからこそボクは、チャビを最も偉大なミッドフィールダーと断言した。
 ツイッターなどでバルセロニスタの意見を見ると、チャビにバロンドールを、という声が多い。これだけのことをやってきているのだから、それも当然だろうが、これは裏を返せば、チャビが受賞するに断言はできかねるということでもある。昨年のメッシーのように、絶対的な意見ではないというワケだ。でもそれは、彼のプレースタイルにもよるところが大きいのかもしれない。
 例えばバロンドール最終候補のメッシー。彼は誰もが認める世界No.1の選手であり、昨シーズンのゴールデンブーツでもある。ワールドカップでは期待された活躍はできなかったが、今シーズンも、昨シーズンを超えるペースでゴールを量産、派手さがある。
 もう一人のバロンドール最終候補のイニエスタも、本来は地味な方だが、ワールドカップ決勝でのゴールというインパクトを持っている。もちろんイニエスタもチャビ同様にこの3年ですべてのタイトルを獲得した選手でもあるから、獲得するに十分だ。
 それに対してチャビは、これといって、決定的な決め手があるワケではない。ただ、バルサとスペイン代表と、そのフットボールをより高次元にしている選手として、高い評価を受けただけのことだ。だからこそバルセロニスタはチャビに受賞してほしいと思っているのだろうが、でも実のところ、ボクの意見は真逆なのである。

 そう、チャビには決定的な要素がない。マドリ戦やエスパニョール戦でのゴールは素晴らしかったが、あれはデルビーがなさせただけのこと。本来は主役になる選手ではない。あくまでボールを保持し、ゲームを支配することが持ち味であり、その結果としてメッシーなりビージャなりをその日の主役にさせる。そういう選手なのである。
 だからこそボクはチャビにバロンドールは必要ないと考えている。
 ペップのいう“このやり方”とは、けっして一人のクラックに依存しない、選手11人が連動し、相手を圧倒するフットボールのはずだ。その11人を連動させる潤滑油たるチャビが、クラックの最たるものといえるバロンドールを受賞するなど、皮肉以外の何物でもない。だからボクは、もし本当にチャビがバルサのスタイルを最高次元にしている選手であるならば、バロンドールを受賞すべきではないと考えているのだ。

ニックネーム ガッチョ at 16:56| Comment(25) | TrackBack(0) | 選手 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月03日

純然たるバルサ

 「われわれは戦力を考えるとき、まず戦術面を考慮し、『出場機会が少ない選手が居心地の悪さを感じているかどうか』といったほかの要素については、その後に検討することにしている。彼が全試合に出場し28ゴールを挙げていたなら、われわれも売却などしていなかっただろう」(スポナビより)
 バルサのスポーツ・ディレクターであるスビサレッタのコメントだ。もちろん彼とはズラタン・イブラヒモビッチのことである。
 「“賢人”とはコミュニケーションが全くなかった。だから僕には、どこに問題があったのか、彼がどんな問題を抱えていたのかさっぱり分からなかった。バルセロナでの最初の6ヶ月は素晴らしかった。だが、春先以降、監督との関係がこじれ始めた。プレシーズンでは心機一転、スタメン確保に向けてベストを尽くすつもりだったが、最終的に状況が改善不可能であることに気づかされた」(同上)
 そのイブラヒモビッチのコメントがこれである。もちろん“賢人”とはバルサ監督、ペップ・グァルディオラのことだ。
 てっきり金がなくてズラちゃんを売るのだと思っていたのだけど、思っていた以上に関係が悪化していたようだ。
 でもそんなことは関係なく、ボクはズラちゃんの移籍を残念に思っている。理由はハッキリしていて、それは奇しくもスビサレッタが語ってくれている。

 もうすでに散々述べてきたが、イブラヒモビッチを獲得した理由は、引きこもる相手を崩すためだ。バルサは歴史的にフィジカルに優れる相手に手堅く守られるとその力を発揮できない傾向にある。残念ながらそれは三冠を獲得した2008-2009シーズンとて例外ではなかった。チェルシー戦である。
 バイエルンを圧倒し、レアル・マドリを地獄の底に叩き落とし、バルサ史上に残るチームとして意気揚々と敵地スタンフォード・ブリッジに乗り込んだバルサだったが、強固なチェルシーディフェンスの前に決定機を作り出せず、枠内シュートはイニエスタのゴラッソのみ。その自慢の攻撃陣は為す術がなかった。
 だからペップはエトーを切ってイブラヒモビッチを選んだのだとボクは解釈していた。なぜならイブラヒモビッチはフィジカルに優れ、いささか強引な形でもゴールを奪う能力を持ち合わせているからだ。ユヴェントスやインテルの攻撃の中心、あるいは攻撃そのものとして活躍したイブラヒモビッチのプレースタイルは追い込まれた時のバルサに必ずや必要なはずだった。

 だが、スビサレッタは言う。イブラヒモビッチの移籍は、戦術的なものが原因だ、と。

 バルサにおいて最も重要視されるもののひとつである足元の技術があれだけしっかりしているにも拘らずイブラヒモビッチが戦力外となる理由はどこにあるのだろう。
 たぶんそれは2010-2011シーズンに新加入したビジャとの比較である程度、明らかになるのかもしれない。
 ビジャとイブラヒモビッチ。二人の単純に能力を比較したとき、優れているのは、圧倒的にイブラヒモビッチだ。シーズンのゴール数という一点を除けば、すべての面でイブラヒモビッチの能力の方が上だとボクは思っている。もちろんゴール数だけがストライカーの優劣を決めるというのであれば、ビジャに軍配が上がるのであろうが、もし本当にそういう考えならば、別にあのポジションはエトーのままでも問題なかった。だから、それが必ずしも最重要ではないからこそ、バルサはイブラヒモビッチ獲得にエトー+推定50億円という天文学的な金額で獲得したのだ。
 しかしここに来て、再びゴール数にシフトチェンジした、とは思えない。とすれば、やはりイブラヒモビッチが戦術的にバルサのスタイルに合わなかった、と判断せざるを得ない。

 長らくイタリアのプレーしていたイブラヒモビッチは、その能力の高さから、ほとんど彼を頼りに攻撃が形成されていた。それは簡単にいえば、イブラヒモビッチ中心の攻撃、ということになる。だがバルサの攻撃は一人の選手に依存するスタイルではない。イブラヒモビッチが、最初の6カ月は、というが、それはチームの成熟度の低さも関係しているだろう。イニエスタが復帰し、バルサのパスがより回り始めれば、イブラヒモビッチの万能性は次第に必要なくなっていくのである。
 それに、イブラヒモビッチの能力を必要とするのは、本当にここ一番のときだけである。だが、リーガでプレーしている限り、バルサが彼の能力に頼る場面はほとんどない。しかも彼のフィジカル、当たりに強いプレーは、リーガではほとんどファールになってしまうのだ。もともと安定感など求めてはいけないイブラヒモビッチ、彼にこんな状況下で、ここ一番だけを期待するなど、難しかったのである。
 それでも、ボクはそれでもイブラヒモビッチの2シーズン目を見たかった。なぜならイブラヒモビッチがバルサのスタイルに合っていなかったからだ。
 確かにチャビやイニエスタと代表でプレーし、二つの国際タイトルを獲得したビジャはすんなりとバルサのスタイルに溶け込むだろう。だが、それはあくまでバルサのスタイルに溶け込むだけでしかない。正直なところ、すでに三冠という結果を残しているバルサのスタイルの、その延長線上にボクはあまり興味がない。だがイブラヒモビッチならば、それを破壊できるような気がしていた。もし本当にペップが“賢人”であるのならば、バルサが違うステージに進むために、“愚者”が必要だとボクは考えていたのだ。

 だが結局、イブラヒモビッチを放出したということで、ボクの考えは妄想に終わった。
 そして前線のメンツがバルサ+ビジャ、もしくはスペイン代表+メッシー。いずれにしてもパスサッカーが貫かれることになる。そして後者にあるように、ビジャはすでにバルサのメンバーと世界一を獲得しており、またおそらくエトーよりも相性は良いだろう。それはつまり、三冠を達成した“バルサのスタイル”を、さらなる高みへ到達させることだ。
 きっとそこには、一つの邪道も許されない。自分たちが信じるモノを打ち破ることなど何ものにもかなわないということを証明するためのチーム。ペップはそれを選択したのである。

ニックネーム ガッチョ at 22:13| Comment(3) | TrackBack(0) | 選手 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月17日

バルセロニスタはイニエスタに恋スタ

 まさか、イニエスタが世界一を決めるゴールを奪おうとは、想像すらしていなかった。

 イニエスタがバルサカンテラの最高傑作であることに異論を唱える人はいないだろう。パスセンス、ボールキープにドリブル、そして前を向く能力と、どれをとっても一級品。もちろんボクもイニエスタこそ、過去現在未来、すべてのバルサカンテラにおいて最高の選手であると思っている。だが、イニエスタの能力を持ってしたとき、その言葉が最高の褒め言葉であるかどうかには、疑問が残る。
 昨シーズンの終盤、イニエスタがいるといないとで、バルサのフットボールの質が変わったとき、バルセロニスタの仲間内で、彼の重要性がやっぱり話題になった。そこで、あるバルセロニスタが、イニエスタはジダンと同等レベルにある、という話にまで発展した。おそらく多くのバルセロニスタがそれに賛同するのだろうが、申し訳ないけれど、ボクはそれを即座に否定した。
 パスセンス、ボールキープにドリブル、そして前を向く能力と、どれをとっても一級品であるイニエスタは、確かにジダンと同じ才能を持つ。それは間違いないだろう。だが残念なことに、イニエスタにはジダンに及ばないものが一つだけ、でもそれが原因でジダンとは決定的に違うと言わざるを得ないものが、ある。

 あれはもう5年も前の話だ。
 ライカーが監督に就任して2シーズン目、チームは満身創痍、けが人が続出しながらも、順調にリーガ制覇に向かっていた。そしてその満身創痍の状況が、あるカンテラ選手に出番を与えた。それがイニエスタだった。多くのバルセロニスタが彼の活躍を心待ちにしていたのだが、それがようやく実現し始めていた。
 しかしまだ20歳のイニエスタ、すべてが順調だったワケではない。それがゴールである。
 彼の放つシュートがことごとく決まらなかったのだ。そして当時、それがバルセロニスタの中で、少しだけ不満に思われていた。それについてボクは、まだ20歳の若者に過度の期待をしても、と思って文章を書いたのだが、あれから5年、イニエスタがその才能に見合うだけのゴールを決めてきたかと言えば、答えはNOだった。
 ボクがジダンに並ばないと断言した理由はここにある。
 残念ながらイニエスタのプレーはゴールに直結しないのだ。それはゴールを決める数を競うスポーツにおいては致命的なことだ。確かにイニエスタの能力は素晴らしい。だがゴールを決めることができなければ、試合を終わらせることができない。バルサはイニエスタがいないとそのフットボールの質を落とすことには違いないが、しかしそれはあくまで質だけの問題なのである。
 
 だからもう一度言おう。
 イニエスタは“バルサカンテラの最高傑作”に過ぎないのだ。

 でもそれももう過去の話になる。
 思い出してもみれば、ジダンがクラックへの道を歩みだすのはワールドカップで優勝してからだ。それまではデル・ピエーロの陰に隠れる選手でしかなかったし、それにワールドカップでの活躍も、実質的には決勝で2ゴールを挙げたのみ、とすれば状況はイニエスタも同じだ。しかも当時のジダンの年齢が26歳、これもまたイニエスタと同じなのである。
 現バルサ監督のペップ・グァルディオラはいつか言った。
 「チャビ、いつかあの少年がお前を引退に追い込むだろう」
 いや違う。イニエスタの辿り着くべき先は、“カンテラの最高傑作”などではなく、世界を震撼させる唯一無二の選手になることだ。彼にはそれだけの才能が備わっているし、少なくとも、今回のことでその資格も十分に得た。
 それに、知ったはずなのだ。あの瞬間、イニエスタ本人が、それに対する喜びがいかに大きいものかを。そしてそれがすべてのフットボールファンを、いや、バルセロニスタを熱狂させるのだということを。


ニックネーム ガッチョ at 17:49| Comment(3) | TrackBack(0) | 選手 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

 

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posted by 269g