もちろんすべてのタイトルを獲得してほしいと思っている。でも今シーズンのタイトル獲得は、バルサというクラブにとって、大きな意味を持っていると思っている。
Numberのペップ特集はなかなか面白かった。なかでもチャーリーことレシャックのコメントが、やっぱり興味深い。
“もう一度‘70年代前半頃に戻すことを決めました。その方向性に従って、技術に優れサッカーをよく理解しているタイプの選手を集めることにしたんです。同時に、育英部門にも力を注ぐことを決めました。そのスタイルが完成に近づき始めたのが‘89年あたりですから、そこから現在に至るまでが、今言われている「バルサのスタイル」になります”
1970年と1989年のバルサ、どちらにも共通する人物といえば、ヨハン・クライフだ。
さらにNumberから引用する。
“ボールが早く的確に選手間を動き続け、選手たちは頻繁にポジションを移すが、チーム全体のバランスは常に保たれる、そういうサッカーを達成し、且つその美しいスタイルに勝利という結果が伴えば、必ずバルサは成功する”
“クライフ率いるバルサは、リーガ4連覇を果たし、クラブ史上初となる欧州チャンピオンのタイトルを獲得した。その華麗なスタイルは世界中で絶賛され、ドリームチームと呼ばれるまでに至った”
一つ目の引用文は、ボクに1974年のオランダ代表を思い起こさせた。彼らには結果が伴わなかったが、理想とするフットボールは、紛れもなくあれだろう。もちろんクライフ自身が体現したフットボールでもある。次の引用文は、そのままクライフが率いたチームのことだ。リーガ4連覇は未だに彼らしか成し遂げていないバルサの記録、そして欧州制覇はライカーの率いる2006年まで待たなければならない。
つまり「バルサのスタイル」とは、クライフによってのみ実現されるもの、と思っていた。
ライカーのバルサがバルサの歴史に名を刻んだことは間違いない。だが彼らのフットボールが、美しいスタイルだったかどうか、その判断は難しい。
もちろん彼らのフットボールも攻撃的だったといっていいだろう。それはバルセロニスタを満足させるものだった。少なくともボクは嫌いではなかった。だがライカーのバルサには、そこに手堅さが加わっていた。守りを意識しても十分に戦えるチーム、二冠を制したシーズンが特に象徴的で、カンプノウでのチェルシー戦やミラン戦は、その最たるものだった。カンプノウで守りを意識する、それは残念ながら先に出た「バルサのスタイル」とは異なるのだ。
ただしそれは、その前のシーズンにチェルシーにしてやられた、そしてこれまでのバルサが散々やられてきた「バルサのスタイル」の弱点を克服しているものといえた。だからボクは当時、こんな風に思っていた。
このバルサがヨーロッパチャンピオンになれないのであれば、バルサは今後二度とヨーロッパチャンピオンにはなれない、と。
現バルサ監督であるペップ・グァルディオラはバルサのカンテラ(下部組織)出身の選手だ。
チャーリーがペップのプレーを初めて見たときのことをこう語っている。
“たしかに上手いが、あの線の細さではトップチームでプレーすることはないだろう、という意見が周りには多くあった。私はそういう連中に、じゃあ賭けよう、と答えました。結果はご存知の通りです”
ペップはバルサ史上に残る偉大なカピタンであり、またドリームチームを支えた選手の一人である。しかもドリームチームの見事な攻撃はペップなしにはありえなかったかもしれない。つまりそれは、ペップなくしてドリームチームの「バルサのスタイル」を築けなかった可能性を示すことになる。
トップデビューさえ危ぶまれた選手が、重要な選手として必要となる「バルサのスタイル」。そこには特異性がある。その特異性は、バルサやバルセロニスタのアイデンティティであり続けながらも、バルサが敗れ去る理由の一つでもあった。だがそれも今、終わろうとしている。
もし「バルサのスタイル」がチャーリーの言うように、89年頃から築かれたものであるのであれば、ペップの率いるバルサこそがその頂点になる可能性は大いにありえる。
「バルサのスタイル」の一つの完成形態であるドリームチーム、それを選手として誰よりも知っているペップが監督をしており、そのペップと同じフットボール哲学を持つ、しかもカンテラ出身のチャビやイニエスタがチームの中心、「バルサのスタイル」を具現化する最高の条件が整っているのが、今のチームなのだ。まして、このチームには、フットボール史上最高の選手になる可能性を秘める、カンテラ出身の選手までいるのだ。
しかし、そのフットボールの成功は、勝利を伴わなければならない。
だからボクはすべてのタイトルを獲得してほしいと思っている。
三冠の達成。それはこの上ない結果。そしてその結果こそが、バルサとバルセロニスタを勇気付ける。
“少なくともあと50年、このバルサの美しいスタイルについて疑問が出ることはないですよ”
「バルサのスタイル」。
バルサが常に追い求めるべきはこれであるということを、証明するためにも、今シーズンのすべてのタイトルを獲得してほしいと、ボクは思っているのだ。
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